祖父

 

祖父は俺が保育園のときに死んだ。70歳ぐらいだった。祖父は小さな土木会社の創業者で、社長だった。

 

戦後すぐ、若い頃、祖父は地元の税務署で働いてたらしい。けど上司から横領だか何かの罪をなすりつけられてクビになったらしい。俺はその話を母親から聞いて、母親は姑、つまり俺の祖母から聞いて、まぁ祖母は旦那、俺の祖父から聞いたんだろうけど、なんつーか、孫としては、濡れ衣とかじゃなくて祖父が本当に横領をしてたらイイな、って気がする。なんつーかそんぐらい肝が太くて、そんで「いやオレは悪くないよ上司がほんとはヤッたんだよ」とかシレっと祖母に、カミさんに喋るようなツラの皮の厚いヤツだったらカッコいいなって気がする。

 

ド田舎の零細土建屋とは言え、ゼロから会社作ってドカタのあんちゃんを従えてぼちぼち稼いでたヒトなんだから、若い頃にそんぐらいの「おイタ」をしてた方が箔がつくよな、その方が孫としては自慢になるよな、俺みたいな小市民とは違ってた、ってふうに思いたいよな、みたいな。その方が山ほど宝くじ買って山ほど外してたってこともギャップが出て可愛げがあって孫としては萌えるよな、みたいな。もっと生きててほしかったですな。じいさん。