視力と亡霊

 

目が悪くて普段あんまモノがよく見えてない。何となく鬱陶しくて仕事以外のときは基本裸眼で、だからいろいろ、あれもこれもあんま目にハッキリ映ってない。

 

だから町とか駅とかでよくヒトを見間違う。具体的には制服着た高校生を自分の昔の同級生とかと見間違う、そんでちょっとビビる。ここでこいつに会うとは、みたいな。そんで一拍遅れてアタマが追いつく、いやいや、これはあいつじゃない、もうイイ歳だから、制服着てるわけねーから、みたいな。

 

亡霊っちゃ亡霊って感じ。昔の知り合いが昔の姿で町を漂ってる、みたいな。まぁだいたいのヤツらはとっくに地元出てもうこの辺にはいないんだけど。目とアタマの悪い俺が勝手に亡霊を見てる、とっくにイイ歳こいた昔の知り合いの昔の姿を、現役のティーンエイジャーに勝手にダブらせて勝手にまごついたり懐かしがったりしてるってだけだけど。まぁ要は、目とアタマが悪いとあんまヒトの区別とかつかない、今と昔の区別がつかないって、ただそれだけかもな。それはそれで悪くないって気もする。そんなひとりひとり顔とかカタチが違ってたらいちいち面倒だろ、そんなふうに色とりどりだったら、そんな景色はしんどいだろ、このアタマじゃ処理できないだろ、普通に考えて。