わたしは地上で唯一の人間である。おそらく、地上も人間も存在しないのだろう。
おそらく、ある神がわたしを欺いているのだろう。
おそらく、ある神が罰として時を、あの大きな幻影をわたしに与えたのだ。
わたしは月を夢みる。月を捉えるわたしの眼を夢みる。
わたしは最初の日の夕べと朝を夢みた。
わたしはルーカーヌスを夢みた。
わたしはゴルゴタの丘とローマの十字架を夢みた。
わたしは幾何学を夢みた。
わたしは点と線、平面と体積を夢みた。
わたしは黃と青と赤を夢みた。
わたしは虚弱な少年時代を夢みた。
わたしは地図と王国、あの夜明けの決闘を夢みた。
わたしは想像を絶する苦痛を夢みた。
わたしは剣を夢みた。
わたしは疑念と確信を夢みた。
わたしは昨日という日を夢みた。
おそらく、わたしに昨日はなく、おそらく、わたしはまだ生まれていない。
おそらく、わたしは夢みたと夢みている。
わたしは少し寒気がする。少し不安である。
ダニューブ河に夜が訪れている。
わたしはデカルトを、彼の両親の信頼を夢み続けることにしよう。