独創性

 

買った。北園克衛の詩集。

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詩集っつーか実質写真集。晩年の北園が「詩だ(キリッ」って言い張って撮ってた写真。紙とか棒とか、その辺のもん適当に並べて撮りましたみたいな。

 

 

あと監修者の長い解説文。いろいろ書いててへーって感じで面白いけど、崇拝っぷりがちょっとウザい。

(…)角度を変えると見えるものがすこし違ってくるだけで、どこから覗いても同質の感覚を照射するひとりの人間がゆるぎなく立っている。魔法の杖のように、北園が触れたものは詩も雑誌のカットも写真も、たちどころに同じ色に染まるのだ。

要するに北園には個性があって独創性があってサイコーです、みたいな。

 

このヒトのツイートも同じ語り口。要するに北園のやることには独創性があって他とは違ってて一目瞭然、他のヤツにはマネできないぜ、みたいな。でもそういう「クリエイター」の「個性」とか「オリジナリティ」とかって信仰、クリシェから離れて自由になろうぜってのが現代文学だの現代アートだの「前衛」だのってモノの役割だったんじゃねぇの? 紙クズ丸めただけの北園の写真とかマルとか四角とか並べただけの北園の装丁見て「テイスト」とか「同じ色」とかってふうに言っちゃうのは、そんなふうに「北園らしさ」を見出してマンセーってしてんのは、ぶっちゃけ間抜けでバカ丸出しだろ。むしろ北園がやってたことへの否定だろこれ、こういうモノ言い、みたいな。…いや、まぁ、北園も北園で「俺はバカな一般大衆とは違うモノの分かった選ばれしアーティストなんだ」的なこと言ってたりもするから、本人も本人でアホか、的な感じもあるんだけど。詩だの芸術だのってアイテムでも「独創性」って陳腐でちんけな概念、その魔の手からはなかなか逃げらんねぇんだな、みたいな。

 

ボルヘスだっけな、誰だかが「作者の名前なんてもんが出てこない文学史こそが理想」みたいなこと言ってて、あー、まぁな、確かにな、みたいな。