10年ぶりに『ドグラ・マグラ』読んだ。どうせまた途中で投げ出すと思ったけど今回は意外と最後まで読めた。普通に読みやすかった。要は親とか先祖の体験が記憶として子孫に埋め込まれて伝わり続けてく、みたいな話で、そんなふうなズラッと無限の「縦軸」(時間)の連鎖と、記憶喪失の主人公(語り手)が自分とうりふたつのヤツを見ながら「俺はあいつなのか?」とか延々悩んでる、そういう無限の「横軸」(現在)の反復が交差してごちゃっと絡んでメタフィクション、みたいな話。なんか角川文庫版とかの無駄にサブカルな表紙で損してる気がする。この作品もそうだし、そもそも夢野久作そのものが。別にそういう作家でもねぇだろ、みたいな。
ついでにちまちま『猟奇歌』ってのも読んでる。
五十銭もらって
ひとつお辞儀をする
盗めば
お辞儀せずともいいのに
毒薬と花束と
美人の死骸を積んだ
フルスピードの探偵小説
こんな感じで死ぬとか殺すとかナイフとか銃とかその手の中2ポエムがだーっと並んでて、でもそれがなんかイイ感じにのどかで、ぼーっと読んでると結構気持ちいい。イイ意味で無意味っつーか、何も喋ってない、何も読んだことになってない、みたいな。エンタメってこういうモノのことを言うのかもな。いちいち感動とかさせられなくて済む、こういうモノを。