ホイットマン

 

おれはおれを祝福し、おれのことを歌う。

そしておれがこうだと思うことを、おまえにもそう思わせてやる。

おれの優れた原子ひとつひとつが、おまえにもそなわっているからだ。

 

おまえは他の連中を追い抜いたって? おまえは大統領だって?

大したことじゃない、みんな自然にそうなるし、もっと先へ進むんだ。

 

おれは太古のパスワードを言う、おれは民主主義の印を差し出す、

神にかけてもいい、おれが受け入れるのは、誰でも同じ条件で受け入れられる同じものだけ。

 

おれは矛盾しているだろうか。

まぁそれでもいい、おれは矛盾しているのさ。

 

今日の仕事を終えたのは誰? 食事を真っ先に済ませるのは誰?

おれと一緒に歩きたいのは誰?

 

おれが行く前に話してくれるかい? もう遅すぎると決めつけはしないよな?

 

まだらの鷹がすっと寄ってきてはおれをなじる、うろつきながら無駄口ばかり叩くな、と。

 

おれの素性も、おれの言わんとすることもよく分からないだろうが、

それでもおれはおまえのための「元気」でありつづけ、

おまえの血をきれいにし、強くする。

 

最初におれをつかまえそこねても、気を落とさないように。

どこかで見失ったら、別のところをさがしてくれ、

おれはどこかで立ち止まって、おまえを待っていてやる。

 

――『おれにはアメリカの歌声が聞こえる』(ウォルト・ホイットマン