4630万円の男

 

阿武町の4630万円の事件、おもしれーって感じでニュースとか見てる。まぁなんつーか、そりゃ返したくないよな、金、みたいな。結構あの若いあんちゃんに感情移入してニュース見てる。

 

今んとこ一番ドラマチックなのは、役場のヒトに連れられて返金の手続きに行って、でも銀行の目の前で「今日はやめとく」とか言って引き返したシーン(?)だな。多分いろんなこと考えただろうな。考えたっつーか、アタマのナカ、ばーっと感情が巡り散らしてたんだろうな、みたいな。なかなか体験できないよな、俺とかみたいなその辺の人間100人束になっても敵わんイベントだよな、みたいな。

 

多分すげぇ理不尽って思っただろうな。いきなり4600万とか大金振り込まれて、そんなもん、ヒトひとりひとりのしょぼい人生からしたら奇跡そのものでしかなくて、で、そしたら次はその金ミスで送っちゃっただけなんで返してくださいとかなんとかせっつかれて、なんだよこれ、みたいな。頼んでもない奇跡が転がり込んできて、そんでその奇跡はお前のモノじゃない、これは奇跡でもなんでもない、さっさとよこせ、とかなんとか、土足で自分のトコにずけずけ上がり込まれた気分、みたいな。そんなこと言う権利あるのか? そんなふうにこの奇跡を潰すのが、この奇跡を「ただの事務処理ミス」ってふうに貶めちまうことが許されんのか? というかたかだか4600万円の送り間違いなんてちっぽけな奇跡すら許容しない世界ってのはいったいなんだ? たまたま誰かが脈絡もなく数千万、数億って金を手に入れちまう、そのぐらいの「夢」があったっていいだろ、奇跡を奇跡のままほっとけよ、4600万なんて町の年間予算の100分の1とかのはした金だろ? 税金の100分の1使って「夢」を見せたと思えよ、たまたま夢が、俺のトコにやってきただけだって、そういうふうにしときゃいいじゃねぇか、こんなちんけな夢さえ後出しジャンケンで殺すのか? どうかしてるぜ、みたいな。

 

で、個人的に、被告の若いあんちゃんに対してと同じくらい、間違って振り込んだ役場の若いあんちゃんにも感情移入してる。そりゃまぁ、間違うことぐらいあるよな、みたいな。なんつーか、あの4600万を大騒ぎして取り返そうとすんのは逆にその職員を追い詰めることになるんじゃねぇの、的な。役場に苦情の電話バシバシ入ってるらしいけど、4600万ごときでそんなプレッシャーかけなくていいだろ、たまたま「うっかり」が4600万の間違いになったってだけだ、それが46000円でも46円とかでもないのは確率の問題ってだけだ、ってかどうでもいいだろ、いつか自分の通帳にも奇跡的に4600万振り込まれるかもって「夢」への投資と思えばいいんじゃね? みたいな。そのぐらいに思えれば、役場のその若い職員がそんな感じに思ってこれからも普通に働ければな、みたいな。いや別に辞めてもいいけどな、4600万ごときでクレーム入れてくる田吾作どもの限界集落の役場なんかよ。